オーバートレーニングについて
オーバートレーニングという言葉をご存じでしょうか?意味としては、
パフォーマンスの低下は簡単に改善されず、その回復には数週間から、重症例では数ヶ月かかるとも言われています。
厳しいトレーニングをこなすほど、運動能力が上がると思っている人がいるかもしれませんが、実はこれは大きな誤りなのです。
また、風邪などで少し体調が悪くてもトレーニングを欠かさずに行うという方も、もしかしたらその予備軍にあたるかもしれません。
これは、何も健常者やスポーツ選手に限ったことではありません。実は、病気や手術のあと、これに近い状態に陥り、かえって回復を遅らせてしまうケースが少なくないのです。
やる気が出て、周りから褒められて、数値や見た目が変わっていくと、ますますトレーニングを頑張ろうという気持ちにさせてくれます。
私自身感情が高ぶり、やる気になることは十分に分かりますし、そういった経験もあります。成果や結果が目に見えてくると、尚更やる気になっていきます。
そうならないためにも、ここからは「筋トレ」を例に、オーバートレーニングについて説明していきます。
筋トレとは、一旦は筋肉の繊維を傷つける行為です。そのため、トレーニングが終わった直後は、誰でもパフォーマンスは低下しています。
その後、適切な休息を挟むことで、トレーニングによって傷つけられた筋肉の繊維が回復し、以前より強いパフォーマンスを発揮できるようになるのです。
そのようなオーバートレーニングにならないよう、やり過ぎを判断するためのポイントをここからご紹介します。
・オーバートレーニング症候群とは
いつも通りのパフォーマンスを発揮できなくなるだけでなく、日常生活でも身体が重く感じたり息切れしたり、食欲が低下したり、手足がしびれたり、体重が減少したりするなどの「身体的な症状」と、不眠や不安、集中力の低下などの「精神的な症状」が現れます。
オーバートレーニング症候群には明確な診断基準がなく、体調が悪いだけ、あるいは精神的に疲れているだけなど、あまり深刻に捉えられることがありません。また、調子が悪いのはコンディションが原因であると考え、調子を上げるために、さらにトレーニングに励んでしまうという悪循環に陥りやすくなるのです。
・オーバートレーニングになりやすい人とは
オーバートレーニングの状態でトレーニングを続けると、かえって逆効果に繋がります。いくら頑張ってもパフォーマンスは伸び悩むか、あるいは低下し続け、人によっては生活に支障をきたす場合もあるでしょう。最悪の場合、大きな怪我を誘発してしまいます。真面目な人やトレーニングに熱心な人ほど、そのような悪循環に陥りやすいので注意が必要です。
オーバートレーニングは、1回だけのトレーニングで急激になるものではありません。日常的にトレーニングを続けて疲労が蓄積し、徐々に回復する力が弱くなっていくものです。負荷をかけない限り、筋肉は成長しません。
・オーバートレーニングの進捗について
初期にはまず、記録の伸び悩みやパフォーマンスの低下を感じるようになります。続いて身体の不調が続き、軽いトレーニングでも疲れが溜まるようになり、身体が思うように動かない状態を自覚し始めます。
さらにこの状態が続くと、全身倦怠感や睡眠障害、食欲不振、体重の減少、集中力の欠如、安静時の心拍数や血圧の上昇など、身体的疲労の症状がみられます。特に、起床時の心拍数が増加するといわれており、オーバートレーニング症候群を早期発見する目安となります。
最終的には、気持ちが落ち込んで活気がなくなり、精神的な疲労にまで進行することがあります。
・なぜオーバートレーニングになってしまうのか?
筋肉組織の損傷など、運動器の障害によるパフォーマンスの低下だけではありません。肉体的・精神的ストレスにより、視床下部や脳下垂体から分泌されるホルモンのバランスが崩れること、また休養が取れないことによる自律神経のバランスの不調が関係していると思われます。
その発端となるのは、運動中の筋肉のエネルギー代謝効率が悪化することにより、筋肉が障害されることです。次に、循環動態や呼吸、血管内皮などの機能低下などにより息切れ、動機、めまい、疲労感などが出現します。
さらに、免疫機能の低下(風邪が治りにくいなど)、自律神経系の不調(立ち眩みなど)、ホルモンバランスの障害など多様な障害が見られるようになります。より進行していくと、不眠や抑うつ状態など、メンタルの不調も出現します。
重症になるほどトレーニングの減量・中止期間が延び、競技復帰が不可能になることもあります。早期に発見し対応することが必要です。
・オーバートレーニングを防ぐには
オーバートレーニングに陥る前には、必ず身体や心がサインを発しています。それらを早い段階のうちに見逃さず、対処することが重要となります。
ここからはオーバートレーニングかどうかを見極めるためのチェック項目を下記に示します。
・休息時の心拍数に変化はないか
・血圧に変化はないか
・食欲は減退していないか
・体重や体脂肪率が急激に減っていないか
・イライラや不安感がないか
・注意力が低下していないか
・寝つきが悪くなっていないか
・寝入ってもすぐに目が覚めないか
・筋肉痛が長引いていないか
・筋トレの記録が長い間停滞していないか
オーバートレーニングの症状は、人によって様々です。
ここに挙げたチェック項目の全てが当てはまるとは限りませんが、もし該当するものがいくつかあれば、オーバートレーニングの可能性があります。一度立ち止まり、トレーニングの強度や頻度、そして休息期間とのバランスを見直してみましょう。
・どれくらい休息をとればいいのかについて
トレーニングと休息の適切なバランスも人それぞれです。どれだけ追い込んだら負荷のかけ過ぎなのか、あるいは足りないのか。どこからが休み過ぎなのか、あるいは休みが少な過ぎるのか。そこには明確な答えはありません。
その人の能力や経験、性格、体調、さらには天候などの外的環境までもが複雑に関連してくるので、一概にその線を引くことはできないものなのです。
なお、オーバートレーニングかどうかを見分けるには、普段から自分の体調をチェックする習慣を持つことも大切です。上のチェック項目にしても、普段の数字を知らなければ現状と比較することすらできないからです。
・それでもオーバートレーニングになってしまった場合について
それでもオーバートレーニングになってしまったら、回復するには休息以外に方法はありません。そして、その期間は数か月から年単位に渡ることもあります。
症状が重くなると、回復にかかる時間も長くなるため、早期発見・早期治療が大切です。起床時の疲労感がなくなるまで休養が必要となります。
・オーバートレーニング症候群の早期発見
オーバートレーニング症候群の早期発見には起床時の心拍数のチェックが有効です。疲労症状が高まるとともに、起床時の心拍数の増加がみられます。起床時の心拍数が1分間に10拍以上増加している場合は、オーバー症候群の疑いがあります。
身体に現れるサインとしては、筋肉痛や疲労がなかなか回復しない、風邪などの感染症にかかりやすくなる、安静時の血圧が上昇する、意欲が低下する、食欲低下、寝つきが悪くなる、イライラする、抑うつなどがみられます。
起床時の心拍数や血圧の日々の変化を捉えることは、オーバートレーニング症候群の早期発見に役立ちます。心理的プロフィールテスト(POMS)、心理的競技能力診断検査(DIPCA3)、体協競技意欲検査(TSMI)などの心理テストも早期発見に有効とされています。
・オーバートレーニング症候群の予防
急激な負荷のトレーニングや休息・栄養・睡眠が不十分であること、過密なスケジュール、過度の精神的なストレスなどが要因となって起こります。トレーニングは無理をせず、体調の悪い時はトレーニングメニューの変更や負荷を軽くする、トレーニング時間を短くする、トレーニングを中止するなどして対応し、栄養をしっかり摂って休養することが大切です。
普段から頑張り過ぎず、無理せずに適度な休憩と栄養補給を心がけ、運動と休養と栄養のバランスを保ってトレーニングを行うことが重要です。ストレスを溜めすぎないように適宜、発散することも大切です。
せっかく好きで始めたトレーニングができなくなることは、大変悲しいことです。ですから、そうなってしまわないように「予防」が何よりも大切なのです。もし自己診断に不安を感じたら、手遅れになる前に、迷わず医師に相談することをおすすめします。
特に、症状は自分で判断しにくく、また指導者の目にも見分けるポイントの難しい点が問題を複雑にさせているのです。
もし誰かに相談をする場合や医師に相談をする場合には、自分の置かれている状況や体調、身体や数値の変化等をできるだけ事細かに、詳しく伝えるようにしましょう。
その時は、血圧等数値で測定できる場合はその記録した用紙、また日々の体調チェックシート等を提出することになるので、自分自身の体調の詳細について書き留めておくようにしましょう。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。